イヤーワームと強迫性障害の関係性についての考察 【イヤーワームの原因】
私は 軽度の強迫性障害の方はイヤーワームに陥りやすいと考えています。その理由を以下の順番で述べていきたいと思います。
強迫性障害とは?
例えば、仕事や遊びのために外出した際に「ドアにカギをかけたかな?」とか「コンロの火をしっかりと消してきたかな?」などと不安になることがあると思います。これは誰にも経験があることだと思います。
しかし、この不安や心配が度を過ぎてしまい、仕事や遊びに支障をきたしてしまう方もいらっしゃいます。これが、強迫性障害です。
この強迫性障害の度が過ぎると、「何時間も手を洗い続ける潔癖症」「排便を避けるために、ごはんを食べることを避ける、重度の拒食症」などが*2症状として報告されています。
強迫性障害は珍しい病気ではない!?
この強迫性障害は珍しい病気ではないようです。実はこの病気、生涯有病率が2~3%と非常に高いです。100人に2人の割合です。
しかも、この病気はWHOにより、精神疾患を含めた全ての疾患の中で最も生活を障害する疾患の1つとされいるほど、慢性化しやすい病気と認定されています*3
また、強迫性症状はうつ病、統合失調症、摂食障害なその様々な精神障害にもみられることが広く知られています。*4
治療法について
治療法ですが、残念ながら今のところ確立はされていません。しかし、「認知行動療法」と「薬による治療*5」を組み合わせた治療法が最も効果がある方法として利用されています。
イヤーワームと強迫性障害について
私は冒頭で軽度の強迫性障害の方はイヤーワームになりやすいと述べました。
以下の文章は論文の一部を抜粋したものです。この文書をまとめたものを引用後に書いているので、面倒くさい方は引用は飛ばしてください。
不安認知を自動的な情報処理過程と制御的な処理との相互作用としてとらえることがあげられる (Beck & Clark, 1997 ; 杉浦,2003 ;Wells & Matthews, 1994)。自動的な処理 (automatic processing) とは,主に注意や記憶といった低次の情報処理過程を指し,制御的な処理(strategic processing) とは意識的な思考などの高次の認知過程を指す。自動的な処理の代表的な特徴として,努力を必要とせず,強制的,非意図的に生じ,一般的に意識的自覚がなく,その開始や影響の制御が困難であり,最小限の注意や認知的な処理資源でよい点があげられる。一方,制御的な処理の主な特徴として,努力を必要とし,意図的,自発的に生じ,十分意識的で,意図的なコントロールが可能であり,より制御の影響を受け,かなりの注意と認知的な処理資源を要する点があげ ら れ る。(e. g., Clark & Beck, 2010 ; Beck &Clark, 1997 ; McNally, 1995 ; Wells & Matthews,2011,Vol. 54, No. 4, 412-435Japanese Psychological Review― ― 4121994)。それらの理論では,自動的な情報処理過程が制御的な処理を始発させ,また,制御的な処理がネガティブな情報に対して選択的に注意や記憶の処理過程を増強させるといった相互作用が想定されている (杉浦,2003 ; Wells & Matthews,1994)。ここ 20 年間,認知心理学的アプローチの発展により,不安障害患者や非臨床群の高不安者の特徴の一つとして,脅威情報に対する自動的な情報処理過程に歪みがあることが指摘されている。このような情報処理過程における特徴は情報処理バイアスと呼ばれ,不安を維持させ,不安障害を進行させることが指摘されている (e. g.,Mathews & MacLeod, 2002 ; Williams et al., 1997)*6
まとめると、情報処理には「自動的な情報処理」と「制御的な情報処理」が存在し、強迫性障害などの精神疾患の方は、このうちの「自動的な情報処理」が正常に働いていないことがここ20年の研究から考えられると述べられています。
自動的な処理は、努力を必要とせず,強制的,非意図的に生じ,一般的に意識的自覚がなく,その開始や影響の制御が困難であると述べられています。
これはイヤーワームに通じるところがあると思いませんか?この自動的な処理の説明を少し置き換えてみましょう。
「何かのきっかけで、強制的に、非意図的に頭の中で音楽がループし、その開始や影響の制御が困難である」
これは、まさにイヤーワームの症状ですよね。以上より、私は軽度の強迫性障害の方はイヤーワームになりやすいと考えました。
実際にイヤーワームの私も強迫性障害までとはいいませんが、人一倍心配症であることは確かです。
また、妙なこだわりがあり、テストの時は絶対に同じシャーペンを使う(壊れても修理してまで使う)こともありました。
このように、軽度の強迫性障害だなと思う方は、もしかしたらイヤーワームになりやすいのかもしれません。